2012年11月7日水曜日

京都府訪問先:社団法人 京都府歯科医師会

訪問日時2012117日(水) 13:30

事業担当者:京都府歯科医師会会長 平塚靖規先生、同専務理事 中川 徹先生、

同常務理事 木村明祐先生、同理事 宮本保幸先生、同拠点事業PTリーダー 水野昭彦先生、同拠点事業PT看護師 吉良厚子氏、同拠点事業PT歯科衛生士 山形美紀氏、

京都府健康福祉部医療課医務・看護担当副主査 大饗秀和氏、

アイ・シー株式会社(システム開発)倉谷誠一ディレクター、京都府歯科医師会事務局参与 舩川政則氏


 本日は京都府の在宅医療連携拠点事業所である、社団法人 京都府歯科医師会を訪問させていただきました。今回の拠点事業において歯科医師会が拠点となっているのは全国でこちらだけです。
 年々、在宅医療における口腔ケアや『食べる』ことへの支援の重要性が高まっており、地域における歯科専門職との連携が進められています。

 

  京都府・滋賀県では、NST関係者の有志団体「京滋摂食・嚥下を考える会」が京滋地区の摂食・嚥下障害に対する各職域、多職種の共通理解をはかり、医療及び研究に貢献する事を目的として活動しています。
 摂食嚥下と栄養管理への活動が活発に行われていて、摂食嚥下連絡票(監修:京滋NST研究会、京滋摂食・嚥下を考える会)を作成し、病院や施設において異なる食事形態の現状把握と、とろみの度合いや表現方法を統一した共通言語での連携を目指しています。

 病院施設間の情報共有だけでなく、在宅へも結びつけるため、今回の拠点事業では、病院と在宅、医療と介護をつなぐ食の連携ツールを作成し、高齢者の体調変化を疾病発現の前に察知して、在宅復帰後の誤嚥性肺炎等の予防に役立てることを目指します。

 

摂食・嚥下連絡票 (監修 京滋NST研究会、京滋摂食・嚥下を考える会)

 
生活環境が要介護者の現在の身体状態を決定していると考えて、京都府歯科医師会では「きょうのごはん録(ログ)」と命名した、生活情報を中心とした情報共有システムを構築しました。
 『食べる』ことは『生きる』において大変重要や役割を担っており、住民の生活を支える地域包括ケア構築の視点において、『食べる』ことを支援する視点は非常に重要だと感じます。対象利用者像は、病院入院時に口腔ケア等を受けていた人で、退院時カンファレンスで共有された病院での指導を、退院後在宅での継続実現を目指します。

 介護職や介護者がタッチパネル入力できる端末iPadを在宅に置き、日々の食事の様子を動画や静止画で撮影します。食事介助の様子、食事時の姿勢、食環境、居住環境を映像で撮影することにより、言葉で伝えられないものを伝えることができます。
 Web上にタイムラインやカレンダ-を作成して撮影された映像を掲載し、情報や静止画を各専門職がパソコンで閲覧して助言などのコメントを記入します。
 各職種のフィルターがかかっていない情報が得られ、在宅療養者の生活情報を専門家の眼で見て「最近よくむせる」など日々の微妙な変化に気づき、判断して対応することが可能です。

 病院から在宅まで切れ目のない食サポートが可能になるとともに、高齢者のサルコペニアや虚弱が顕在化する前からチェックできる可能性があり、介護予防への貢献も期待できる試みです。

 

京都府歯科医師会会長 平塚靖規先生(左端)

 

1028日には、歯科関係者、在宅医療・介護関係者を対象に「iPad在宅医療連携研修会」が開催されました。「在宅医療の現状と新しい試み」をテーマに講演会が行われた後、「在宅連携の新しい試みと可能性」についてのシンポジウムが行われました。
 京都府歯科医師会は京都府内に18支部あり、在宅医療拠点事業では山科地区、南区、福知山地区の3地区をモデル地区として活動されます。事業を進めるにおいて、今後は「モデル地区キーパーソン養成研修会」を開催し、在宅医療連携拠点事業の事業説明、開発アプリ「きょうのごはん録」の取り扱い説明等を実施されます。
 医療・介護・福祉おけるICTを活用した情報共有については、全国的に注目が高まっております。安全性や情報保護の視点も兼ね備えた、連携が促進されるシステム構築の先駆者として、大変興味深い活動情報だと感じます。
 
 京都府では、住民が安心して暮らし続けられる地域づくりに向けて各方面から活発な活動が行われています。京都府医師会では、5年前から「在宅医療サポートセンター」を設置し、府民への在宅医療の情報提供や医療・介護関係者の各種研修会を開催しています。医療と介護の連携体制の構築が進んでおり、ホームページ上の「ケアマネージャー用京都府内病院連携窓口検索 ケアマネタイムリスト検索」では、京都府内の病院で設定されているケアマネタイムの検索ができます。京都府医師会館5階には「京都府医療トレーニングセンター」が設置され、在宅を模した畳敷きの部屋でのIVH方法など、在宅医養成研修等を実施しています。
 
 また2011年、京都における地域包括ケアシステムの実現を目指して、「京都地域包括ケア推進機構」が設立されました。これは、高齢者の方が介護や療養が必要になっても、住み慣れた地域で、24時間・365日安心して暮らせる「京都式地域包括ケアシステム」を実現するため、府知事、京都市長、府医師会長、府社会福祉協議会長を代表幹事に迎え、医療・介護・福祉・大学等のあらゆる関係団体が結集したオール京都体制で進められています。『地域包括ケア』は様々な方々が、必要な支援をその地域で得られる事でいつまでも安心・安全に暮らせる街の仕組みを目指します。
医療・介護・福祉・行政が有機的に連携し、一つの目標に向かって進む体制が出来ておられる事は、住民にとってこれほど心強い事はないと感じます。
 
 各活動の中で構築された多職種協働の連携体制の中で、京都府歯科医師会では在宅医療推進事業への地域ケア会議等の活用を推進されます。歯科医師会も多職種連携の輪に重要な役割を担っていただき、地域の方々へ適切な支援が迅速に提供される地域となる事を強く願います。

 

京都府歯科医師会館 二条城の西200mの場所です。
 
 
 
京都府歯科医師会では各歯科医師会支部に口腔サポートセンターを設置して、口腔ケアについて住民への情報提供や啓発活動を行っています。
 
  当日はお忙しい中ご対応いただきまして誠にありがとうございました。
  歯科医師会主導で進められているICTを活用した多職種連携促進への新しい試みに大変勉強になりました。
 
今後のますますのご発展を期待しております。
今後ともよろしくお願いいたします。