訪問日時: 2012年11月1日(木) 19:00~ 20:30
事業担当: 社団法人 中部地区医師会 理事 西平守樹医師
介護支援専門員・看護師 永山頼子 様
事務局 名嘉山 達様
本日は、沖縄県中部地区医師会へ訪問をさせて頂きました。
中部地区医師会は沖縄県中部管内の9つの市町村(沖縄市・うるま市・宜野湾市・北谷町・嘉手納町・西原町・読谷村・中城村・北中城村)を管轄する郡市区医師会です。
昭和26年のアメリカ統治下時代に結成され、現在は会員数500名を超える大規模な医師会です。
多くの市町村を管轄されておられますので、各自治体との調整についても活発に進められています。
※訪問時刻や夜間であったので、中部地区医師会健診センターホームページよりお写真を頂きました。
http://www.chubu-ishikai.or.jp/kensin_center/
中部地区医師会では、健診センターや訪問看護ステーションを保有し、地域医療に長年かかわっておられます。
歴史上、独自の文化や価値観を育んできた沖縄では、医療についてもその特徴があります。
まず、沖縄県の特徴として、急性期病院や急性期医療提供体制が確立しており、『救急車のたらい回し』と言われる現象がありません。
救急病院の徹底した受け入れ体制構築と、多くの医学生や若い医師の研修の場として救急医療における人材育成が盛んにおこなわれています。中部地区医師会の包括エリアには急性期病院が4か所あり、充実した救急受け入れ態勢があります。
しかし、急性期病院でも人材不足の問題や、ベッド回転率の問題から受け入れが難しい状況になってきています。
そして、歴史的に急性期医療提供体制を充実されてきたことから、療養型病床や回復期病床がほとんど入る事が出来ないほど不足している状況にあります。
また、人口構造にも大きな特徴があります。
第2次世界大戦で唯一の陸上戦の場となり、多くの犠牲者を出しました。
その結果、団塊の世代である現在60歳~65歳の人口層が明らかに少なく、日本一高齢化率が低い都道府県です。
そして、沖縄県では出生率が38年前から全国1位であり、高齢人口よりも年少人口が多いという状況にあります。中部地区では、アメリカ軍基地も多く設置されており、町並みはアメリカ様式に整えられています。アメリカ統治の時間があったことで、日本本土に古くから地域で見られていた訪問診療・往診という文化や概念が医療関係者のみならず、住民の中にもあまり存在していないというお話を伺い、地域の文化や価値観、歴史が非常に特徴的な地域であることを感じました。
写真左より、
中部地区医師会 理事 西平守樹 先生、 天願 勇 先生、 玉城 浩 先生
中部地区医師会では非常に広い範囲を管轄されておられますが、その中の市町村、地区ごとには高齢化、過疎化が著しい地区も出てきているというお話には驚きました。
若年人口や労働者人口が多い反面、職を得られない若者も多く、地場産業が活発ではないということが背景にあるようです。
沖縄県では、多くの世代、世帯が一緒に暮らす文化があったようですが、経済的な理由から子供を育てるためには共働きが必須であり、仕事を辞めて親の介護を行う事が非常に難しいという地域背景を知りました。
その結果、独居高齢者や老々世帯が1次産業を担う地域では非常に高くなっているとの事です。
この現象は日本全国で見られており、高齢者に対してだけでなく、地域全体の街づくり活動として進めなければならない事を感じました。
地域においては、宅老所のような介護施設が非常に増えてきており、『在宅医療』に対する住民の認知が低く家族介護力の低下も伴い、なかなか開業医や地域の医療・介護関係者が参入しにくい特性があるとのことです。
中部地区医師会では、平成23年度4月より、在宅医療に取り組む医師間で、24時間365日支援提供体制における関係者の負担が非常に大きい事への意見が聞かれていました。
患者に安心して療養した頂くために継続的な支援提供体制することも重要であり、訪問看護や訪問介護、地域支援包括支援センター、訪問歯科、訪問薬剤等、多職種の連携によるネットワークを構築するべく話し合いを重ねられました。
そして、平成24年度在宅医療連携拠点事業の採択を受けるに当たり、ネットワークの立ち上げとなりました。
地域の医療・介護・福祉を連携しながら地域全体で住民を支えるネットワークを構築されています。
また、中部地区に位置する4か所の急性期病院へも連携協力のお願いに訪問され、各病院で在宅療養患者のバックベット確保、急変時受け入れについても了解を頂きました。
着実に地域の関係者へ協力の輪を広げておられます。
地域において『在宅医療』の概念が薄い地域において、丁寧に在宅医療を含めた地域包括ケア構築に向けた取り組みを、丁寧に理解を促す活動を行う事の必要性を感じます。
急性期病院においては、退院支援室等の設置がされておらず地域との連携窓口がない状況との事です。
中部地区医師会では、まずは在宅医療や地域医療に関する情報を医療機関にも把握してもらい、地域全体の継続的な医療提供体制の構築に向け、協力の理解を促す活動から開始されています。
中地区医師会在宅医療ネットワークのホームページはこちらです↓
http://www.chubu-ishikai.or.jp/zaitakunet/
連携する上で情報共有も重要な要素です。
離島を含む広範囲の地域を管轄する中部地区医師会では、ICTを活用した情報共有システムを構築されています。
情報共有と同時にヒューマンネットワークも非常に重要な要素であり、研修会の開催や意見交換会、
地域のステークホルダーが一同に会する機会の設置等を行い、人間同士のつながりを構築し地域のネットワークを構築する活動を展開されます。
かかりつけ医間でのグルーピングを行い、連携による強化型在宅療養支援診療所の申請なども見られています。
広範囲の過疎地~都市部を管轄される中部地区医師会ではこれからますます活発な活動が展開される事と存じます。引き続きよろしくお願いいたします。