2012年11月28日水曜日

茨城県訪問先:公益社団法人茨城県看護協会

訪問日時:20121128日(水)900

事業担当者:政策企画主任 真木 真奈美様

 
 本日は茨城県の在宅医療連携拠点事業所である、公益社団法人茨城県看護協会を訪問させていただきました。今回の拠点事業において看護協会が拠点となっているのは全国でこちらだけです。
 在宅療養を患者様が送られるかという判断をされる上で訪問看護の十分な提供体制は重要な要素です。
 医師・看護師が全体的に不足する茨城県の看護協会としての在宅医療連携拠点事業活動を学ばせていただきます。
 
 
 
茨城県看護協会では、平成21年度厚生労働省老健局の訪問看護支援事業を実施以来、訪問看護サービスの安定供給と在宅療養環境の充実を長期目標に掲げて取り組んでこられました。
 県職員、看護協会職員、有識者を含む訪問看護連絡協議会において、訪問看護ステーションの在り方を長年構築してきた中で、訪問看護関係者及び利用者のためにコールセンターが必要、という結論に達したそうです。

茨城県内には茨城県看護協会立の訪問看護ステーションが3ヶ所あります。そのうち県南のつくば、土浦、取手・竜ヶ崎地区に訪問看護ステーションが一番多かったことから、土浦訪問看護ステーションにサポートセンターを設置しました。その後茨城県看護協会に隣接する訪問看護ステーション絆にもサポートセンターを設置して2か所で全県を対象に活動しています。
サポートセンターでは病院からの退院調整の相談や訪問看護ステーションの設立支援、診療報酬の算定などの訪問看護の業務に関連する相談に対応しています。
  在宅への退院の際に訪問看護ステーションが見つからない場合、病院が方々の訪問看護ステーションに電話するのではなく、サポートセンターに連絡を受けて調整する事にも取り組んでおられます。
  また診療報酬、介護報酬同時改定後には、訪問看護ステーション設立に関しての相談が増加しているそうです。
 
 当事業の活動目標として、訪問看護の提供体制の充実、多職種ネットワークの構築、地域の実情の認識共有に努められました。
 連携を進める上で各職種の有益性や活動情報を共有する事、多職種が連携できる仕組み作りを進めることが連携拠点としては大変重要な活動です。

 在宅医療連携拠点事業では、全県の行政・職能団体で構成する「在宅医療連携推進協議会」を設置して年2回会議を開催します。事業終了後の茨城県内の在宅医療の在り方に結び付けるため、在宅医療の実態や現状の分析に対する助言、事業実施内容の評価、今後の体制についての助言等を得る予定です。
  また水戸市内の医師会、薬剤師会、理学療法士会、ケアマネ協会、水戸市包括支援センター等在宅医療に関わる関係者で構成する「在宅医療連携推進協議会検討部会」を設置し、年5回会議を開催して、在宅医療の現状把握、課題抽出や解決策、災害の発生に備えた対策等の検討を行います。

茨城県看護協会のある茨城県保健衛生会館には茨城県栄養士会、茨城県理学療法士会も入っています。
 
 在宅療養支援システム構築事業として、医療機関から在宅への円滑な移行支援の在り方の検討と在宅医療関係者の人材育成を目的として事例検討会を実施します。
急性期病院の認定看護師と訪問看護師が同行訪問したケース等について検討会を行い、関係者間の情報共有のあり方など在宅療養支援システム構築に努めます。

 茨城県では、つくば、土浦、取手・竜ヶ崎の県南は高度医療が提供でき医師数も多いですが、県北では訪問看護ステーションが1ヶ所のみの市があるなど医療格差が大きいとのことです。
  そのため、茨城県内の拠点事業所の1つである公益財団法人筑波メディカルセンターで行われた診療所医師、訪問看護師、ケアマネジャー対象の意識調査紙をご提供頂き水戸市内在宅医療関係者に対して実施し県南県央の意識の比較検討を行います。
退院調整支援、日常の療養支援、看取り、災害対策等の視点で各職種における意識の違いや、連携促進に向けての課題の把握を進められました。

  住民に向けた意識調査も実施され、住民目線での各サービスの認識度や在宅療養を送る上での有効性等を把握され、取り組む要点の抽出から実施されました。
地域における各地域住民の意識も、生活支援を生業とする看護師の視点から、情報収集が行われております。

県南の住民は訪問看護の利用に抵抗がないそうですが、県北の山間地区には高齢者は嫁が看るという封建的な意識や、サービスを受けていることを近隣に知られたくないから訪問看護の看板を付けて来ないでほしいという意識が未だにあるそうです。

また住民啓発においては患者の生活に寄り添う看護を基盤とした活動展開が行われております。
サービスを受けて在宅療養する、というイメージを住民に持ってもらうための普及啓発活動として出前講座の実施や「まちの保健室」の開設を行いました。

茨城県では全県下に元気高齢者育成支援(介護予防事業)への活動として、シルバーリハビリ体操教室が開催されております。
地域資源の体操ボランティアの協力を得て「水戸市シルバーリハビリ体操教室」を開催し、参加者対象に「在宅療養生活の映像上映」や「介護保険の使い方」などの出前講座を行ったり、9月から茨城県保健衛生会館1階で「まちの保健室」を平日毎日1時間(11001200)開設して、健康リスクの早期発見や早期受診を支援するため気軽に健康相談や血圧測定ができるようにしています。

茨城県看護協会1階の「まちの保健室」です。気軽に立ち寄って健康相談ができます。

 
茨城県看護協会2階の「生活エンジョイルーム」です。
在宅医療・介護関係者はもちろん、地域住民の皆さまにもご利用いただけます。

「訪問看護ステーション絆」
 
在宅医療従事者の負担軽減の支援には、訪問看護の充実が不可欠です。
茨城県看護協会のように中立的な立場で、訪問看護の充実度の地域差を全県単位で把握して、訪問看護全体を統合・統制できるような組織が必要だと、今回の訪問を通じて感じました。
在宅医療においては訪問看護だけでなく、地域住民とともに様々な職種が住民目線での生活に基づいて有効に連携し、機能を発揮する仕組みが求められます。
中立的立場を確保する看護協会として、地域における連携拠点活動は大変期待される点であり、今後の地域の発展が大いに期待されます。

今後の地域の実情に合わせた活動展開を期待しております。
今後ともよろしくお願いいたします。