訪問日時:2012年9月19日(水)15:00~
当事業担当者:医療保健事業部長 渡邉房枝在宅医療連携拠点事業 担当 辻田秀美
本日は、平成23年度からの2年目在宅医療連携拠点事業である、社会福祉法人天竜厚生会へ訪問いたしました。
社会福祉法人天竜厚生会のある浜松市天竜区(北遠地域)では、高齢化率が約50%を超えています。
近年の林業衰退等による産業の低迷に伴い都市部への労働人口の流出がみられており、全国的な出生率低下による急激な人口減少とともに、過疎化の進む中山間地域です。こちらの地域では、車の通行が難しい道も多数存在し、坂道や階段を登り、徒歩で保健師などが訪問することも珍しくない地域特性があります。
『ここでいつまでも暮らし続けたい』という住民の希望をどのように支えていくかという課題に対して、まず地域の実情を情報共有し、限られた資源の効率性の高い活用方法に関し、地域の多職種全員で検討・展開というスタンスで活動してこられました。
在宅医療連携拠点事業の事務局があります天竜厚生会診療所
|
龍山地区、佐久間地区、水窪地区を対象に事業展開をされています。
龍山地区(人口 886人)、佐久間地区(人口 4,488人)、水窪地区(人口 2.614人)
非常に地域資源が限られている状況が可視化されています
|
平成23年度は、北遠地域の医療・介護関係者を対象に、多職種合同カンファレンスを開催して在宅医療・介護を推進する上での課題抽出を行い、そこからワーキングをたちあげました。
ワーキングは① 退院時の書式検討、退院後の状況の情報伝達について
② 地域医療連携パス(口腔衛生)
③ 介護を必要としている人の情報共有のあり方(インフォーマルサービスについて)
④ 医療機関等同士の情報共有について
の4つのテーマを設けておられました。
口腔ケアについて受診率が低い地域の実情に対して、ワーキングで話し合い、成果として口腔内アセスメント票を作成されました。在宅に関わる事業所のヘルパーなど、誰でも在宅療養患者や高齢者住民の口腔内の状態が評価できるようにアセスメントの内容や、マニュアルの内容を検討されました。
アセスメント票に口腔機能の評価の項目をいれて、さらに嚥下障害チェック票の記入を促すようになっています。
嚥下機能は生きていく上で栄養摂取という生理的役割と、『食べる』ことを楽しむ、元気でいることを認識する等のように精神的・社会的役割も担っています。また、『食べる』ことは、胃瘻などの終末期医療に関わりの深い事柄です。
嚥下障害に対応し、早期に嚥下訓練へとつなげることで、経口摂取機能の維持が可能になります。元気高齢者への支援となり非常に重要です。またワーキングを通して多職種の連携が深まり、アセスメント票活用の地域医療連携パスの活用で多職種協働が促進され、連携をさらに深めておられます。
天竜厚生会は浜松市より地域包括支援センター北遠中央の運営委託を受けています。
水窪地域には訪問看護ステーションがないため、地域包括支援センターの看護職員が本来業務ではない内服管理や受診支援、夜間コール対応もしておられます。
台風が来て道が遮断された際には、地域包括支援センター職員が水と食料を持って各住民宅を巡回し物資提供など必要なケアの提供もされました。
限られた資源の中で、どのような事が出来るのか、柔軟に検討し対応されている地域の様子を暖かさと共にご教示頂きました。
地域の多職種連携において、非常に重要なヒントをいただきました★
資源が非常に限られた北遠地域において多職種連携が有機的に連携する事は非常に重要な意義がある事を地域で共有されていました。その上で、平成23年度モデル事業の検討課題として挙げられていた、『連携拠点事業所の継続性』を視野に入れ平成24年度の事業に臨まれました。
地域住民への安心した暮らしを支援し続けるために、地域を包括した視点で多職種連携を促進する拠点事業所の継続性が求められており、住民生活の支援を主軸活動とする行政との協働が不可欠であるため、今年度、医療機関・介護事業所の代表と天竜区健康づくり課、天竜区長寿保険課の課長が委員となり、委員会を設置しました。
浜松市天竜区役所に拠点事業の進捗状況の報告に伺う際には、浜松市天竜区長寿保険課、健康づくり課、社会福祉課の各課の課長およびご担当者にご参加いただき、協議の場を設けてくださるそうです。
地域住民の生活を支える上で、各課が横断的に連携し、地域包括ケアの構築に取り組むことは先駆的、かつ有効な取り組みであると言えます。2年目在宅医療連携拠点事業所としての実績ある活動の成果だと感じます。
在宅医療連携拠点事業所が何か提言をするときには、行政や関係団体に結果だけ持って行くのではなく、話し合いの経過に参画してもらって、ともに対応を考えていく必要があると話されました。
課題抽出後のワーキングでは、話し合いだけで終わるのではなく成果物を作って継続させていくことを目標にされたそうです。目指すものが見えてきたことで関係者の共通認識ができました
職種の合同カンファレンスやワーキングの開催は水窪地区や佐久間地区で行い、事務局が出向いていきました。在宅医療連携拠点事業で北遠地区の地域包括ケアのためにみんなで活動する。そのための事務局として関わるという姿勢で臨まれています。
天竜厚生会 = 拠点事業所 ではなく、地域の多職種連携の中継地=拠点事業所 という認識を周知徹底されました。
拠点活動における事務局の連絡先としては「天竜厚生会」と記しますが、広報を行うためのちらしやポスター等には「在宅医療連携拠点事業 北遠地域」という名称で活動を行っています。
会議等も各地域の会場をお借りし、地域の中において開催されます。
このような地域の様々な方々へ心を配り活動されたことが、地域が一枚岩となって現在も活動継続されている要因だと感じます。
在宅医療連携拠点事業~静岡県北遠地域~ のホームページです。
限られた資源でどう地域の方の生活を支えるかが地域包括ケアであり、その中の在宅医療の推進方法、推進者には地域性があるという事を学びました。
皆様のさらなるご活躍をお祈りしています。