鹿児島県訪問先:医療法人ナカノ会 ナカノ在宅医療クリニック
訪問日時:2012年10月24日(水)8:30~
当事業担当者:理事長 中野一司先生
ナカノ在宅医療クリニックは、鹿児島中央駅から北に6Km行ったところにあります、在宅医療専門のクリニックです。
ナカノ在宅医療クリニックの外観です。緑屋根の白い建物が素敵です。
|
ナカノ在宅医療クリニックは地域(鹿児島市)で生活を支える医療システムを構築したいという中野先生の想いのもと、1999年9月に開業されました。
当時は介護保険施行6か月前の時期であり、訪問介護やヘルパー、介護施設等の社会資源が存在しましたが、それぞれが個々に提供されている状況でした。
これらの社会資源が有機的につながり、多職種連携で機能する地域連携ネットワーク型在宅医療システムが必要であると考えられたそうです。
在宅医療は、地域社会資源を基盤においた多職種が連携するチーム医療であり、チーム医療実践のため条件には、1.良質な連携システムの構築(ICT活用)2.各職種スタッフが優秀なこと(教育環境の充実)を挙げられています。
医療法人ナカノ会では、ICTをフル活用した多職種連携システムを構築しています。電子カルテを導入し、看護師が看護記録を直接電子カルテに入力するなど、スタッフ全員が電子カルテを使用し、法人内メーリングリストを活用して情報交換できる状況です。
在宅医療連携拠点事業では法人外(鹿児島市地域)に向けてのICT化、情報共有化を図り、カナミックシステム(KANAMIC NETWORK)と共同で多職種連携クラウドシステム導入を目指します。
このように、メーリングリストやWEBを利用しての情報共有等を進めておられます。
中野先生は2006年に「在宅ケアネット鹿児島メーリングリスト(CNK-ML)」を、鹿児島市の医療、介護、福祉、行政、教育機関の連携ツールとしての活用を目的として立ち上げられました。
現在では、全国におられる在宅医療関係者の方が参加されています。在宅医療、ケアの全国レベルのメーリングリストに成長し、メーリングリストの有用性を実証されています。
在宅医療の教育・研修については全国から医師、看護師、行政等の研修を受け入れ、同行研修、ケアカンファレンス等見学研修などを行っています。また鹿児島大学医学部6年生の学生実習施設となり、医学生に在宅医療や訪問看護について教育されています。
在宅医療連携拠点事業では、専門職や一般の方が参加する「かごしま多職種連携勉強会」を年4回開催予定です。在宅医療についての講演と、その中でグループワークを行い、KJ法にて多職種連携の課題に対する解決策の抽出をします。
在宅医療についての同意書です。患者様の個人情報の情報共有についての記述があります。
|
朝のカンファレンスの様子です。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、社会福祉士、事務など非常にたくさんの職員の方が参加されています。
訪問当日は8:30にお伺いし、朝のカンファレンスの様子も見学させていただきました。
通常のケアカンファレンスに加え、4週間に1度の服薬カンファレンスの日にも当たっており、多数の職員の皆様が参加されていました。
毎朝のカンファレンスでは、法人内メーリングリストで事前に患者情報を共有しているため、本格的な意見交換が可能になっているとのことです。
中野先生はケアカンファレンスを、法人内外の教育活動の一環として考え、教育効果も期待して頻回に開催しておられます。
在宅医療連携拠点事業を担当されるMSWの松下さんと中野先生。
中野先生は「キュア志向の医療=病院医療」に対し、「ケア志向の医療=在宅医療」という在宅医療の新たな医療概念を提唱しています。
現在の医療界は、超高齢社会を迎え、援助対象が(キュアで治る)病気から(ケアで対応すべき)障害に変化し、病院を中心とした医療(医療+介護)供給システムが対応できていない状況であるとし、超高齢社会の慢性期医療はキュア志向の病院医療の哲学からケア志向の在宅医療の哲学への転換(パラダイムチェンジ)が求められていると考察されておられます
また、ケアタウン・ナカノ構想を掲げ、高齢になり、障害を抱えても、地域で安心して、人生の最後の時まで生活できる(住み慣れた地域で看取れる)環境を提供することを目指しています。バリアフリーの高齢者の住環境や、医療・介護サービスを提供し、将来的には商業施設、教育・研修センター等を提供する計画で、現在第1期計画に着工されています。
ケアタウン・ナカノ予定地。広大な土地に中野先生が理想とされるまちが建設されます。完成が楽しみです。
中野先生、スタッフの皆様には、朝早くからご対応いただき誠にありがとうございました。
ICTを活用された地域連携ネットワーク型在宅医療システムの構築への先駆的な取り組みを全国に発信していただきますことを期待しております。
今後とも引き続きご指導頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。