熊本県訪問先:熊本市保健所
訪問日時 :2013年2月21日(木) 15時~
当事業担当者:健康福祉子ども局医療政策課 医療企画係 前田友紀子 様
健康福祉子ども局医療政策課 課長 米納久美 様
健康福祉子ども局医療政策課 技術主幹 川上 俊 様
熊本市は政令指定都市であり、人口70万人以上を抱える九州地方有数の都市型地域です。
人口に比例し医療資源、介護支援が豊富で、救急医療などの提供体制が整備された地域です。
都市型地域においては、これから2025年にむけて急激な高齢者人口の増加が見込まれており、熊本市でも例外ではありません。そのことを市自治体の持つ人口統計データからいち早く分析し、未来の地域のあり方について検討が進められました。その取組みの一つとして、平成22年より在宅医療推進に向けた検討会開催でした。また、首長である市長の主導のもと、平成23年に「くまもと医療都市ネットワーク懇話会」を設置し、そこで市のアクションプランとして10年後の医療の姿を市民に明らかにするような「くまもと医療都市2012グランドデザイン」を策定しました。
この中の3本柱の1つに「高齢者や障がい者などが住みなれた地域でいきいきと暮らせる都市を目指す」という方向性を掲げました。
このような地域として方向性を明確に掲げることは地域の関係者が一丸となって取り組むきっかけとなり、士気をたかめる取組みです。
市長自らが「熊本医療都市ネットワーク懇話会」の座長を担うなど積極的に関わる行動から、在宅医療推進に向けて多くの市民や関係者の興味関心が高まりました。
この時期と同じくして、厚生労働省の平成24年度在宅医療連携拠点事業が開始され、熊本市として参加することに至りました。
こちらの保健所には保健師はおられません。 医療政策に関わる部署が在宅医療推進を担うということが、こちらの拠点の特徴の一つです。
もともと地域保健医療計画の策定などで地元の医師会の先生方や市内の医療機関との連携があったことで、こちらの部署が担当課として決定しました。
在宅医療を推進するために、まずは地元医師会の協力は必要不可欠と考え、何度も何度も説明に通われたことを伺いました。
最初は事務局では誰に声をかけたらよいか悩み、いつ、どのように連絡したらよいかもわからず、失敗しながら手探りだったとのことです。
最初は話しづらくても、何度も何度も足を運び、事業の説明や熊本市が目指す地域の未来について一生懸命説明して回ったそうです。そうすることで、次第に顔の見える関係から話ができる関係に発展し、お互いの情報交換、会話ができるような関係に発展していったそうです。
そのような丁寧な医師会の先生方との顔の見える関係づくりが成熟し、現在は医師会と密な連携の下で、熊本市の在宅医療推進政策は大きく発展しています。
|
左から 米納様、川上様、前田様 |
医師には17時以降に話しに行くなど、行政としても柔軟に対応されていました。市が本気で頑張っている熱い気持ちが相手の方にも伝わり、「医療者魂に火がつく」ようなこともしばしば。急性期病院にもおそるおそる声をかけたところ「在宅医療・介護連携の話をしているようだけれど、自分たちの所にはこれまで話が来ていなかった。やっと呼んでくれた」と言われたそうです。「わからない中でも飛び込んでいくと、皆さん良い方ばかりで温かい。その使命感には頭が下がります。」とお話しくださいました。
熊本市医師会の副会長はグランドデザインの在宅医療に関する作業部会にも参加されており、都道府県リーダー研修もきっかけとなって、熊本市の各区で在宅担当理事を配置するなど在宅医療の推進に積極的に取り組まれています。
また、医師会とは別の任意団体として、熊本在宅ドクターネット(
http://www.kumamoto-zaitaku.com/)もあり、主治医・副主治医制などを医師のネットワークが支えています。
熊本市ではグランドデザインの事務局を高齢介護課と連携して担っています。介護のことは高齢介護課に教えてもらうなど、業務別の部署となる行政の中でも、横の連携をされています。
さらに、市長の公約で設置された「2000人市民委員会」(
http://www.2000nin.jp/)も横の連携で活用しています。これは市民によるモニター制度のようなもので、年4回アンケート調査を行い、住民からの市政に対する意見を募るものです。アンケート実施は広聴課の所管ですが、このアンケートにがん、在宅、終末期などについて項目を入れ込み、意見をもらっています。
熊本市の未来を地域住民と共に考え作っていることは、これらの地域すべてに求められる取組みです。
住民と多くのかかわりを持つ行政と得意分野を生かした取組みです。
政令指定都市である熊本市の特徴として、多くの庁内関係部署が存在します。自治体が大きくなることで、庁内連携や、関係職種との連携にも工夫や時間、労力を要することが明らかとなっています。
その中でも、いかに庁内、そして地域の関係職種と顔の見える関係を構築し、信頼関係を深めていけるかが、需要です。
こちらの部署の担当官は同じ部署で5年目を迎えています。5年間関係者と顔を合わせ、積極的に講演会や勉強会、研修会、フォーラムなど情報収集と勉強を行いながら在宅医療推進の担当官として関わってこられました。
人と人とをつなぐのはやはり【人】であり、連携のキーパーソンである担当官をその部署に位置づけたということが、熊本市の優れた取組みの一つです。
このような熊本市の工夫ある取組みにより、様々な地域の関係者ら住民と協力しながら拠点事業を進めてこられました。そして最後に、拠点事業を進める上では「信頼」がキーワードだとおっしゃいました。
行政は異動があって人が変わるため、しくみシステムが残るようにシンプルで分かりやすいものをつくり、きちんと引き継いでいくことが重要だとお話しくださいました。
行政としての役割のご発信も期待しております。
ありがとうございました。