2012年12月26日水曜日

山形県訪問先:社団法人鶴岡地区医師会

山形県訪問先:社団法人鶴岡地区医師会
訪問日時  :2012年12月26日(木) 13時半~
当事業担当者:総務課地域連携係 係長 遠藤 貴恵 様

 年末の冬の山形県鶴岡市へ訪問させて頂きました。
 当日は前夜から豪雪となり、下から舞い上がる雪を初めて経験しながらお伺いしました。



 鶴岡地区医師会館に到着すると、在宅医療連携拠点事業ご担当の遠藤様が出迎えてくださいました。寒い中外まで出てきて迎えてくださったことがとても嬉しかったです。このように地域の方々の心をつないでおられるのだとも感じた瞬間でした。

 鶴岡地区医師会様では、在宅医療連携拠点事業室「ほたる」を設立され、看護師、ソーシャルワーカー、事務員を配置して連携推進活動に取り組んでいらっしゃいます。
 「ほたる」の最大の強みは、平成23年度在宅医療連携拠点事業開始時に十分な検討を経た窓口設置と人員配置、そして活動に応じた組織編成であると感じています。郡市医師会の内外で顔の見える関係の構築と組織同士の連携体制を結ぶためには、「ほたる」の事務局3名の活動が非常に重要であり、ほたるの在宅医療連携拠点活動が目覚ましい成果につなげられた取組の秘訣であると強く感じます。
 医師会員のマネージメントと共に、地域の多様な関係者と顔の見える関係を構築し、医師会の取組として企画運営していくためには、医療知識やコミュニケーション技術、情報収集と分析力、マネージメント能力、客観的判断御能力が求められます。それらの能力をバランスよく配置した拠点が「ほたる」です。
 ほたるの活動では、2か月に1回の拠点運営委員会に加え、必要時には昼休みにウイークリーミーティングを行うなど、医師と直接顔を合わせて話すことを大切にされています。

資料をたくさん用意してくださり、丁寧に説明してくださいました。
中央左から、渡邊様、小野寺様、遠藤様、土田先生

 鶴岡市では様々な職種が一堂に会する機会がなく、他の職種の理解が深まらないという地域課題があったため、拠点では年4回の多職種連携会を企画されました。介護職のケアマネジャーが多く、医療知識不足による活動の困難があるために医療的な側面も研修会のテーマにされるなど、しっかりと地域の現状を踏まえ、各職種が活動しやすくなるよう、また連携が取りやすくなるよう、課題解決に向けた活動を進められています。また、この研修会では毎回アンケートで次回の希望テーマを尋ねたり、講演のみではなく、メーカーの展示コーナーや実技を交えるなど、内容も工夫されていました。さらに拠点では、他の学習会なども集約する窓口となるべく学習会集約カレンダーを作成して公開するなど、地域で活動する専門職の能力向上に寄与されています。
このような活動がきっかけとなって、大きな会ではなかなか聞けないことを聞ける勉強会を開催してほしいとの声が上がり、居宅支援事業所への出張勉強会が実現しました。「具体的に困っていることについての相談ができて心強い」との反応があるそうで、拠点が地域の専門職の大きな支えになっているようです。拠点としても組織の知識が増えるため、小さな勉強会を今後も行っていきたいとのことでした。
 このような繋がりは、23年度の拠点事業活動の中で会うたび声を掛け合い、顔の見える関係を構築されてきたことによるものでした。地域包括支援センターの方にも月1回ミーティングに参加してもらったり、一緒に福祉体育祭で地域包括支援センターの利用の仕方をテーマとした退院後の在宅移行の寸劇を行い、そこでほたるのPRをしたりと、地域包括支援センターと共に活動されていることは非常に印象的です。


手作りのほたるPRボードです。
丁寧に住民や関係者の方々に伝えたい情報を発信されている様子が伝わります。


 同じ医師会母体の地域包括支援センターでも、なるべくこちらから出向いて1年以上かけて顔の見える関係を構築して現在の活動に繋がっているとのことで、丁寧に関係を構築されてきた足跡が感じられます。また多職種連携の橋渡しを行う総合相談窓口は9か月間で52件と昨年度よりも利用が増えており、その9割ほどが専門職によるものでした。今後は他の包括支援センターとも連携を深められるように活動されるご予定です。
 また、IDをもつメンバーへの限定公開にて毎週ショートステイ空き情報提供を行っています。FAX、メール、ホームページからの確認で情報を集めてインターネット上で限定公開していますが、平成23年末には毎月100件台だったアクセスが平成24年2月には800件以上と大きく伸び、情報集約のニーズの高さがうかがえます。

鶴岡地区医師会 地域医療連携室 ほたるホームページ
http://www.tsuruoka-hotaru.net/

 歯科との連携では、歯科医につなぐ窓口がないことが課題であったため、訪問歯科診療の相談窓口を設置し、歯科医師会とのミーティングを継続されています。活動を通じて歯科医師とケアマネジャーとの連携が重要視され、連携がスムーズになってきたとのことです。アンケートを行った結果では訪問診療が可能、ケアマネジャーとも協力していきたいという歯科医も思った以上にいらっしゃり、今後の活動が期待されます。回復期リハビリテーション病院への歯科介入では、治療の必要性があるのに治療を拒否する方もいらっしゃるため、看護師が自信を持って説明できるようにと、協力してくれる歯科医師による院内研修会が予定されていました。
 薬剤師会のアンケートでは、訪問服薬指導が可能かどうかといった項目を追加して尋ねてもらっていました。訪問服薬指導については「要相談」とする薬局も多く、医師の理解が必要という回答も多かったとのこと。医師会の事業所である強みを生かし、医師への理解を促して、その結果を基に薬剤師会とも相談していくことを考えられていました。

 迅速な対応が求められる医療の情報共有ですが、大型病院とかかりつけ診療所間の情報の受け渡しがスムーズに行われないという課題が全国各地で見られており、その課題解決として鶴岡地区医師会では、ICTを用いた取組みを進めています。
 平成13年度に作成した共有型電子カルテシステム「Net4U(the New e-teamwork by 4 Units)」は、新宿区医師会のゆーねっとをベースに1生涯1患者1システムとして開発された在宅医療や医療介護連携の連携ツールです。平成24年末で50以上の施設が登録し、総登録患者数は3万名弱、総共有患者数は6千名程となっており、高齢者見守りパス「Note4U」とも連携しています。
 この「Net4U」は、「ID-Link」というネットワークサービスである「ちょうかいネット」と連携しており、病診連携情報共有システムとしても機能しています。医師会員の診療所における医療情報ネットワークに、主に病院の診療情報を共有するネットワークサービス(ID-Link)を接続させた病診連携情報共有システムは全国で初めてのことでした。こちらのシステムについては全国からお問い合わせがあり、その注目度は全国トップクラスです。「ちょうかいネット」は庄内地域全体における情報参照可能な共有ツールであるため、より広い範囲での共有も可能となっています。住民が広く分布するこの地域ではICTの有効性が生かされているのではないでしょうか。

 鶴岡市では3世代同居率が高かったのですが、最近はその割合も低下してきており、サービスを利用することも重要になってきています。しかしどんなサービスがあるというより先に介護保険そのものが理解されておらず、介護保険証がどれかわからない、なくしてしまうといったことも多く見受けられるそうです。今年はほたるの紹介のためのリーフレットやニュースレター「ほたる便り」を作成・配布したり、市が主催する集いに参加してほたるの活動や在宅医療に関するPRを行うなど、住民への啓発活動にも尽力されました。
 地域をつなぐ取組みを約2年続けてこられたほたるでは、これからほたるや鶴岡地区医師会が主導した取組みから、地域の様々な方を巻き込み主体的にみんなが取組む体制づくりにむけて進めていくことが今後の目標だと力強く話してくださいました。
 さらに質の高い地域となるよう地域と共に活動する鶴岡地区医師会、ほたるの取組みを学び、地域の医療を牽引する医師会としての誇りと力強さを感じました。

地域の課題を見据え、地道な関係づくりを通して
包括支援センターや関係組織と共に活動されている様子が
よくわかりました。今後のご活動も期待しております!