2012年11月29日木曜日

茨城県訪問先:公益財団法人 筑波メディカルセンター

訪問日時:20121129() 900

事業担当者:副院長 在宅ケア事業長 志真泰夫先生

  
 本日は茨城県つくば市にある公益財団法人 筑波メディカルセンターの在宅医療連携拠点事業所「つくば在宅医療連携拠点」を訪問させていただきました。

筑波メディカルセンターは、19853月から開催される科学万博に対応する救急医療機関として19825月に設立されました。その後、筑波メディカルセンター病院は人口増加の著しい県南・県西地域における救急医療の充実に取り組み、現在は茨城県地域がんセンターとしてがん医療にも力を入れています。
 筑波メディカルセンターは「筑波メディカルセンター病院」「つくば総合健診センター」「在宅ケア事業」、そして茨城県から委託を受けている「茨城県立つくば看護専門学校」「筑波倍検センター」と多様な医療系事業を展開しています。

在宅医療連携拠点事業では、居宅介護支援事業所や3か所の訪問看護ステーションを有し在宅医療の現場を担っている「在宅ケア事業」が主体となって「つくば在宅医療連携拠点」として活動してます。今回の在宅医療連携拠点事業所は訪問看護ステーションとしての登録であり、訪問看護を基盤とした「医療と介護」の連携の促進により在宅医療推進活動を展開しています

  つくば市は人口約21万人で、北部は筑波山を中心に伝統的な農村地域、南部は学園都市を中心に、教育機関、研究機関が集中し、その周囲に住宅地域や商業地域がある都市地域であり 一つの市に人口減少の過疎地型と人口増加の都市型が同居しています。「つくば在宅医療連携拠点」としてこういった地域の特徴をふまえて、つくば市地域包括支援センターと月1回定期協議を行い、つくば市医師会との連携などを行っています。


志真在宅ケア事業長(奥)下村在宅ケア副事業長(手前)
 
 まず、事業の開始時に地域の在宅医療資源の把握のため、診療所、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所の各施設概要調査と、各事業所に勤務する医師、看護師、ケアマネジャーの3職種個人を対象にアンケート調査を行いました。
アンケート調査を通して「ケアマネジャーが在宅看取りに関与していること」「退院前カンファレンスの参加状況や参加への意識が職種で異なること」「情報共有の重要性の認識は3職種とも共通して高いこと」などの実情がわかりました。アンケート調査結果で明らかになった課題の解決策検討のために、まずそれぞれの同じ職種間の意見交換会を開催しました。そこでは「病院の退院支援が十分ではない」「医師と連携をとることが難しい」などの意見が出されました。また、つくば市医師会、訪問看護ステーション、ケアマネジャー連絡会、包括支援センターが参加する多職種合同意見交換会を開催することで、多職種連携を促進し、多職種連携の課題解決にむけて取り組みました。

 つくば市の救急医療についても伺いました。筑波メディカルセンター病院には救命救急センターがあり、ERから三次救急まで担当しています。在宅療養している患者の急変時や看取り時に救急車を呼び救命救急センターに搬送されることがしばしばあります。病状が急変したり、家族を看取ると言う体験は多くの方々にとって初めての経験であり、大きな不安や動揺が生じることは当然です。不安な家族や患者の思いが理解され尊重される支援体制が必要であることがアンケート調査や意見交換会から浮かび上がってきました。

 そこで、住民や患者・家族の思いが叶えられるように在宅医療についての理解を促す取り組みとして、住民の方々にもわかりやすい在宅医療に関する入門パンフレット『わが家がいちばん』を作成しました。このパンフレットは在宅療養のイメージを知るために実例に基づいた在宅で受けられる介護サービスやご家族に向けた患者への関わり方等について書かれています。また、看取りまでの身体の変化や看取り時のケアについて、柔らかい言葉で綴られた「これからの日々」「お別れのとき」のパンフレットを作成しつくば市内の訪問看護ステーションや診療所で活用しています。パンフレットはいずれも筑波メディカルセンター在宅ケア事業ホームページに掲載しています。

 
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上記パンフレットがダウンロードできるホームページはこちら↓
 
 ITを利用した情報共有システム構築では、システム事業者各社から情報を入手し比較検討をおこないました。「つくば在宅医療連携拠点」としてそれぞれのシステムについてメリット・デメリットが抽出されており、現状では情報共有システムの機器操作に在宅医療・介護現場の職員が不慣れであるため、拠点事業所内でタブレット型端末を試用することから始めています。
 

 
 在宅ケア関連事業所事務所(居宅介護支援事業所、訪門看護ふれあい、つくば在宅医療連携拠点事務局) スタッフがミーティング中でした。



筑波メディカルセンター病院外観
 

 在宅ケア事業長の志真泰夫先生は、過去に地域包括ケアの先進地であるスウェーデンやデンマークへ視察訪問されています。スウェーデンのマルメ市では薬局配達員による在宅への定期的な薬剤や衛生材料等の配達が行われ、同時に薬局配達員が医療廃棄物を回収するというシステムを見て来られて、わが国でも導入されるとよいと感じたとのことでした。在宅医療の普及に伴い、家庭での医療廃棄物が増加することはわが国でも今後の大きな課題です。わが国の実情に即した薬剤等のデリバリーと医療廃棄物等の回収体制の構築が求められます。
 

志真先生は、NPO法人日本ホスピス緩和ケア協会の理事長も務めておられます。志真先生は在宅医療連携拠点事業として早急に取り組まなくてはいけない疾患は、「がん」と「認知症」であると考えており、「がん」については「がん診療連携拠点病院」となっている筑波メディカルセンター病院が中心となって緩和ケア研修会や患者支援を行っているそうです。在宅医療連携拠点事業の活動に志真先生が係わった戦略研究事業のOPTIM(緩和ケア普及のための地域プロジェクト)の活動経験を活かしてゆくことも大切だと考えていて、在宅医療推進と地域緩和ケア普及を同時に進めてゆくためには、事例検討を含めた多職種研修が非常に重要である、などのご意見を伺いました。

 
当日はお忙しい中長時間ご対応いただきありがとうございました。
国立長寿医療研究センターとして今後も在宅医療推進のため活動してまいります。
今後ともご指導よろしくお願いいたします。