2012年10月18日木曜日

奈良県訪問先: 医療法人ひばり ホームホスピスひばりクリニック

奈良県訪問先:医療法人ひばり  ホームホスピスひばりクリニック
訪問日時    :20121018日(木)1600
当事業担当者:院長 森井正智先生

 本日は奈良県の在宅医療連携拠点事業所、医療法人ひばり ホームホスピスひばりを訪問させていただきました。
ひばりクリニックは近鉄奈良駅から生駒市方面に89キロほど西に向かったところにあります。訪問当日はあいにくの雨模様になってしましました。お忙しい中、森井先生にお話を聞かせていただきました。

 ホームホスピスひばりクリニックは診療所での外来はされておらず、24時間365日対応の末期がん専門の在宅緩和ケアクリニックです。おもに北和、中和と呼ばれる奈良県の北部を中心に訪問診療をされています。
2003年の開院以来、約1700名の在宅末期がん患者の診療をされ、約1300名を在宅で看取ってきました。

ひばりクリニックががん在宅に特化した理由を伺いました。
「在宅医療というのは、がん在宅、慢性高齢者在宅、神経難病在宅、小児在宅の4種類あり、それぞれ分けて考えなければいけない。
  24時間緊急対応を考えた時に、がん在宅というのは常に患者に呼ばれる可能性があり、比較的安定している慢性高齢者在宅の定期的な訪問診療に支障をきたすことがある。予定していた訪問診療日、時間に行けないことがある。」

「がん在宅の24時間対応は、医者でなければならない。がんは急性疾患であるため、週単位、日単位で変化する病状を医師が診察して、投薬で何とかなるものなのか等を判断して本人、家族に説明する。患者・家族が死を粛々と受け入れる手助けをすることも医者の仕事だと思っている。

一方、慢性高齢者在宅は、身体状態に変化がない場合、生活というパートが非常に大きい。生活的視野で支えるという意味で介護保険のケアマネ、ヘルパー等が主役だと思う。

 一部の医師からは、高齢患者が診療所へ通えなくなったら往診するのが医者として当たり前、在宅医療はかかりつけ医として当然だ、昔から行っている、という声がある。

しかしがん緩和ケアは、疼痛コントロールやせん妄コントロールなど、プロの知識がいる領域である。がん患者を看るのであれば、専門のリーダーや研修が必要になると思う」

 森井先生を中心に、2005年に奈良在宅ホスピス研究会が発足し奈良県を中心に在宅ホスピス・緩和ケアの普及・啓発に努めておられました。20113月、社団法人 日本在宅ホスピス・緩和ケアネットワークになり、在宅ホスピス・緩和ケアに関連するすべての人々の連携を深め、医療知識・技術、哲学的要素も含めた意識等、在宅ホスピス・緩和ケアに関するノウハウの研鑽をサポートされています。

 今年度拠点事業においては、(社)日本在宅ホスピス・緩和ケアネットワークで行われていた年2回の多職種合同在宅緩和ケア勉強会を発展させ、がん患者・家族がどの療養場所でも安心して緩和医療(ケア)を受けるための知識を習得し、円滑な移行期支援、継続ケア等を学ぶことを目的に、医師、看護師、福祉職の専門職別に、在宅緩和ケアに関する教育プログラムを多地域で実施予定です。
 
お話を伺っている途中で、在宅療養されている患者様の病状が変化したという事でご家族から電話がかかりました。それまでの経過を聞き、その後予想される症状を伝えて電話を終えられました。森井先生の落ち着いた声と対応によって、電話口のご家族も安心を得られたことと思います。
奈良県は総死亡者数に対する自宅死亡の割合が全国で一番高い県です。その理由の一つは、往診する医師が多いことだそうです。
奈良県には人口140万人に対して、在宅療養支援診療所が80あり、また在宅療養支援診療所の届けをしていないけれども年間1人以上の看取りをしている先生が60人くらいいるそうです。人口1万人に1人、往診する先生がいる計算になります。
 関西人は非常に合理的で、「往診する先生が来てくれるなら家の方がええんちゃうの」という考え方にいたるのが、関西人独特の考えかただそうです。全国の自宅死亡の割合が12.4%になりましたが、関西24県は14%を切っているところがありません。


ホームホスピスひばりクリニックは、住宅街の中にありました。一見すると普通のお宅のようです。
がん在宅医療の推進には、地域住民への普及啓発も大変重要だとおっしゃっていました。
在宅緩和ケアを知っている、がんで疼痛がある人も痛みを取ってもらえることを知っている市民を増やさなければいけない、草の根運動で「がんになったら病院、最後は病院」という市民の考えを改革していかなければいけない、と4年前から大学病院の緩和ケアチームと共同で、地域住民に身近な自治会単位で市民公開講座をはじめたそうです。将来的には、医療圏ごと、がん拠点病院ごとに、年に数回、がん患者と家族の勉強会として市民公開講座を開催したいと考えておられます。
今年度拠点事業の一環として、8月に生駒市で「在宅緩和ケア特別講演会:在宅緩和ケアの哲学」を開催されました。対象は一般の方、医療職、福祉職で、74名の一般の方を含む166名の方が参加されました。
玄関にはかわいいさるぼぼのつるしびなが飾られています
 
がん在宅医療には、医療機関の経済的側面を考えることも必要だそうです。
24時間365日対応を行うには、最低でも医師が3人必要で、その他にホームホスピスひばりクリニックには、在宅ホスピス専門看護師 、在宅ホスピス専門ケアマネージャー、在宅ホスピス専門ヘルパーがいます。この体制を維持するために大変苦労されている現状があるのだそうです。在宅医療を推進するためには、多角的な視点で考え、検討が必要だという事を改めて気づかせていただきました。
訪問終了後、最寄駅まで森井先生に車で送っていただきました。車中でも訪問看護師のお話などを聞かせていただきました。ありがとうございました。
 
森井先生、お忙しいところご対応頂きましてありがとうございました。奈良県におけるがん在宅連携での、さらなるご活躍をお祈りしています。
このお車で駅まで送っていただきました☆